本日、当事務所が発送した内容証明郵便について、相手方から電話がかかってきました。

ご依頼者様は、相手方に対して、立替金や貸金の返済を要求したいとのことで、当事務所にご相談をお寄せいただきました。
当事務所では、ご依頼者様の主張を整理し、立替金等の返済を求める内容証明郵便を相手方に送付しました。

これを受け、相手方から当事務所に対して、「証拠もなく、客観的な判断もなく内容証明郵便を送ってくるとは何事だ」という旨の連絡がありました。
どうやら、相手方としては、「証拠をもとに、また証拠を提示しながら請求せよ」ということだったと思われます。とすれば、行政書士は、証拠をもとに何らかの判断をすることになります。

一見、相手方の主張は正しいように見えるかもしれませんが、それは行政書士としての業務内容や法制度を理解しておらず、失当です。
備忘のため、根拠等を記載しておきます。

①証拠を整理し、証拠によって何らかの判断をするのは裁判所の仕事であること
→紛争の最終的な決着方法は裁判であり、当然ながら、裁判では証拠を前提に、証拠を評価し、一定の判断(判決)を下します。
他方、我々行政書士の業務の一部は、「他人の依頼を受け報酬を得て、…権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成すること」であり、他人=ご依頼者様の主張に沿った書面を作成することです。行政書士法を見ても、証拠を評価し、証拠について判断するとはされていません。
すなわち、行政書士は、ご依頼者様の主張を整理し、書面にまとめることが仕事であり、証拠を収集したり、整理したり、何らかの判断を下すことではありません。

②証拠の提示が不要な金銭請求の制度が存在すること
→簡易裁判所の「支払督促」という制度は、申立人の主張のみによって、相手方に金銭の支払いを促すものです。そして、相手方から何らの対応がなければ、一定期間稽古の後、仮執行宣言が付され、強制執行が可能となります。
そして、支払督促では、申立人の主張(請求の趣旨及び原因)のみが審査の対象とされ、相手方の言い分を聞いたり、証拠を提出したりすることなく実行されます。
仮に、本件の相手方の言うように、請求するのに絶対に証拠が必要であるとするならば、この支払督促という制度は成立しないことになりますが、実際には支払督促が多用されていることを踏まえると、請求には証拠を付すべしという主張は失当であるといえます。

行政書士という仕事を続けていると、このような「敵」といえるような相手に出くわすことがあります。
自衛のために、自分の業務がどのような根拠で、何を目的としているのかを常に把握しておきたいと思います。