当事務所にお寄せいただく案件の中では、「公正証書を作成してほしい」という要望が多数寄せられます。
万一、約束した金銭(養育費など)の支払いがなかったときに、すぐに強制執行できるように、と。

ところが、当事務所では、残念ながら、「公正証書」を作成することはできません。

公正証書は、公証人が作成するものであり(公証人法1条)、公証人でない行政書士や弁護士では、作成できないことになっています。
行政書士らが作成できるのは、あくまで公正証書の「原案」の作成であり、公正証書そのものではありません。

そのため、当事務所が「公正証書を作成してほしい」という要望を受けたときには、「公正証書は公証人だけが作成できるので、当事務所では公正証書そのものを作成することはできません。ただ、公正証書の原案となる書面(離婚協議書など)であれば作成できます。」と回答し、ご相談者様のご理解をお願いしています。

ちなみに、「万一、約束した金銭(養育費など)の支払いがなかったときに、すぐに強制執行できるように」というのは、「強制執行認諾文言」と呼ばれるものをつけてほしいというものです。
「強制執行認諾文言」は、約束した支払いがないときは、直ちに強制執行に服するという趣旨の文言ですが、これは公正証書にのみ入れることができます。
公正証書に強制執行認諾文言が入ることで、万一の時に迅速な強制執行が可能(債務名義)となります。
よって、公証人以外の者が作成する書面(公正証書原案)では、いわゆる「強制執行認諾文言」を入れることはできず、仮に入れたとしても、当然、その部分(強制執行認諾文言)は無効です。強制執行認諾文言付きの公正証書(債務名義)ではないため、これだけでは強制執行も不可能です。
もっとも、公正証書原案でも、「本契約書に定める債務につき、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することに合意した」と記載することは可能です。
あくまで公正証書にしたときに「強制執行認諾文言」を付するという合意にすぎないためです。

公正証書は強力な効力がある反面、しかるべき手続きを踏んだうえで作成されます。
時々、行政書士は公正証書を作成できると誤解している方も見受けられますが、残念ながら、行政書士は公正証書を作成することはできません。
これは司法書士でも弁護士でも同じですが、制度上の決まりであるため、どうしようもありません。
それでも、当事務所では、、公正証書にすることも想定した書面を作成し、紛争の予防、解決に努めています。