当事務所では、日常生活での様々な問題に対して、法的な観点から解決のお手伝いをしています。
ただ、当事務所の方針としては、借金の消滅時効に援用はお引き受けしていません。

「消滅時効」とは、一定期間行使されない権利は、規定の期間が経過すれば、もはや行使できなくなるというものです。
「権利の上に眠るものは保護しない」とも言われます。行使できるにも関わらず、あまりに長期間にわたって行使されない権利はもはや行使する意思がないものとして扱われ、権利を消滅させることで、関係の安定を図るものです。権利が行使されない間に立ち入った第三者を保護することも目的の一つです。
民法では、5年が消滅時効の期間となっています(165条)。

このように消滅時効は、法によって認められた制度です。
しかし、当事務所では、お引き受けしません。

理由としては、
①時効の更新・完成猶予の判断が困難であるため
②訴訟に発展する恐れが高いため
です。

①時効の更新・完成猶予の判断が困難であるため
→時効を完成させるには、時効を更新させたり、完成を猶予させるような事情がないことが前提です。債権者に対して、一部でも返済を約束する・返済について話し合いを求める(債務の承認)ことはもちろん、内容証明郵便や支払督促が送付されていれば、一定期間は時効が完成しないことになります。
これらの事実の有無の調査は難しく、仮に時効完成前に時効の援用通知を送ってしまうと、債務そのものを認めたことになり、不利益が生じます。時効援用の可否の判断や発送についてはリスクが高く、当事務所で責任を負いかねるため、消滅時効の援用のご依頼はお受けしていません。

②訴訟に発展する恐れが高いため
→仮に時効援用の通知書を発送し、消滅時効を主張しても、相手方(債権者)から思わぬ資料が提示され、消滅時効の成立が争われることも考えられます。
そうなると、もはや当事者間での解決は困難であり、いわゆる「法的紛争」に発展したといわざるを得ません。その場合、消滅時効の成立を争うのであれば、消滅時効の成立を要件とした債務不存在確認の訴えを提起し、戦うことにもなると思います。
当事務所では、「法的紛争(裁判)」に発展した場合は、対応できません。このような恐れがあるため、方針として、初めから消滅時効の援用のご依頼は受けないこととしています。

本日は、当事務所でお受けしない案件についてお知らせしました。
あえて受けない業務を明示することで、ご相談者様・ご依頼者様とのミスマッチを防ぐことができると思います。
「できない」ものは「できない」とはっきり伝えることも大切なことだと思っています。